流しの二人

  • Author: 流しの二人
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[GAME] トリロジ日記 #6 

やっとこさ7話の解決編と8話の問題編を読んだ。
7話はまあ、色々な意味で非常にわかり易かった。 正答率も高かろう。

で、8話 「目の壁の密室」 をさっそく推理。

小さな断片的手掛かりを繋げてゆくのが楽しい作品だなや。
大きなトリックはふたつあるが、同様あるいは類似の前例はあるところなので、
ミステリヲタの人にはピンときやすいのかもしれん。

そうでなくとも、作中で天野っちがわかり易いヒントをくれているので、
トリックのひとつについては、あまり問題にならないのかも。
むしろ、それ以外との間で、いかに整合的な説明ができるか、というあたりがポイントかすら。

以下、拙者のエレガントでない推理。


とっかかりは、被害者・西森と館山の、午前10時における電話にある。
本来聞こえるはずの至法寺の鐘の音が通話内では聞こえなかったことから、
西森による当該通話は、防音設備の整った演奏室で行われたと考えられる。

とするならば、被害者が殺害されたのは、自室ではなく演奏室と考えるのが自然である。
演奏室には、被害者頭部の打撃痕と合致する形状のパイプ椅子もある。
なお、楽器店の改装工事中で楽器が撤去されていたことから、凶器に楽器を用いたとは考えにくい。

では、西森はいつ、自室から演奏室に移動したのか。
西森は9時1分に部屋を出て、3分後に再び戻った後、死体発見時まで、自室の扉からは退出していない。
となると、西森は、最初の部屋の出入りの後、部屋の窓からいったん外に出てから、
トイレの窓経由で演奏室に移動したと考えられる。
すなわち、つかさ達が駐車場にやってくる前、かつ、正岡訪問後、9時10分以降に、
西森は窓から演奏室まで移動した。

もっとも、トイレにはクレセント錠が内部から掛けられていた。
とすれば、9時1分の退室時、西森はトイレに行き、窓の鍵を外しておいたと考えられる。
その後再び、鍵は閉めておく。

しかし、西森は両足を骨折していたはずである。
にもかかわらず、上記移動を行うためには、その骨折が偽装であった必要がある。

ところで、9時5分に寒川が西森の部屋を訪問した時と、9時10分に正岡が訪問した時とでは、
室内の蛍光灯の状態が、前者では 「明滅」 、後者では 「あかあか」 と描写され、異なっている。
蛍光灯は寒川訪問後、正岡訪問までの間に交換されたと考えられる。

では、誰が蛍光灯を交換したか。
西森の部屋に、その間来客はない。
そうであるなら、西森自身がこれを交換したと考えるのが自然である。
両足を骨折している者に、天井の蛍光灯の交換は、ほぼ不可能である。
すなわち、西森は、本当は骨折などしていない。
したがって、西森は自らの足で、自室の窓から出た上、トイレの窓から再びビル内に侵入し、
演奏室まで移動することができた。

西森が演奏室で殺害されたとしても、死体が発見されたのは、西森の部屋である。
しかし、防犯カメラの映像には、死体を部屋に運び入れる者など映っていない。
なぜ、西森の死体は、演奏室ではなく、西森の部屋で発見されたのか。

現に死体が部屋に存在する以上、間違いなく死体の運搬はなされたといえる。
そして、窓の外にはつかさ達がいる以上、ここから部屋に運び入れることは不可能である。
そうだとすれば、死体は部屋の入り口の扉から運び入れられたことになる。

確かに、死体を部屋に運び入れる者は、防犯カメラに映っていないようにも見える。
しかし、たった一度、部屋の扉は大きく開け放たれたままにされ、カメラからの死角ができた。
死体を部屋に運び込むには、この時をおいてチャンスはない。
すなわち、第一発見者・岩代が、死体発見を装って、扉を開け放った隙に、
車椅子に載せた被害者を部屋に運び入れたと考えられる。

では、西森殺害の犯人は岩代なのだろうか。
岩代は西森の死亡推定時刻である10時から10時半までの間、友人と電話をしていた。
自然に通話をしながら、女性である岩代が片手でパイプ椅子を持ち、
正確に被害者の急所に打撃を加えることは、極めて困難だといえる。
したがって、岩代は西森殺害の犯人ではない。

なお、岩代には単独の証拠隠滅罪は成立しうるが、西森殺害について、
幇助や共同正犯は成立しないため (岩代の行為は真犯人の殺害行為を容易にするものではないし、
真犯人と岩代との間で意思の連絡も認められない)、真犯人と岩代との間に共犯関係があるとはいえない。

ここで、岩代が 「部屋」 に入る時の心理描写 (P.51-52) と、
青田の視点で描写される岩代による死体発見のシーン (P.53-60) の整合性を検討しておく必要がある。

確かに、岩代が死体を運搬し、死体発見時にさも初めて死体を発見したかのように演技したとするならば、
岩代視点 (正確には、三人称・神の視点) における死体発見シーンは、地の文に虚偽が混じり、
「犯人当て」 のルールに反してしまう。
しかし、岩代視点の文章では、「西森修治の部屋」 ではなく、「西森修治のいる部屋」 と表現されており、
岩代が死体を発見したのは、西森の自室ではなく、演奏室だったと考えれば、地の文に嘘はないことになる。
また、岩代が西森殺害の犯人ではないこととも整合する。

他方、青田視点の死体発見シーンでの岩代は、既に西森の死体を演奏室で発見した後、
その死体を西森の部屋に運び入れるために死体発見の演技をしているだけであり、
上記のように解釈すれば、両シーンの間に齟齬は生じないことになる。

この 「ふたつの異なる時間・場所を同一の時間・場所だと読者に誤認させる叙述トリック」 こそが、
作者の仕掛けた罠である。


では、西森を殺害した犯人は、誰か。

西森は10時に演奏室にいた。
そして、演奏室で殺害されたと考えられる。
西森の死体が岩代によって運搬されたのは10時50分。
10時から10時50分の間、西森の死体 (あるいは生前の西森) が演奏室に存在したことになる。

にもかかわらず、定時 (10時) の見回りをした青田は、楽器店を見回ったが
「どこも何の異常もありませんでした」 と証言している。
楽器店を見回っていながら演奏室をチェックしていないとは考えにくい。
演奏室を見回っていないのに 「どこも」 という言い方をするのも不自然だ。
よって、青田は演奏室の見回りもしたと考えられる。

とすれば、演奏室における生前の西森、あるいは西森の死体の存在を無視した
青田の証言は、嘘の証言ということになる。

青田が犯人でないなら、このような証言をする必要性はない。
したがって、犯人は青田。


なお、岩代が死体を運搬した理由については、各所に散りばめられた伏線から、推理が可能だろう。

・西森の両足骨折が偽装であり、これを治療したのが岩代だったこと。
・西森は相当な 「ケチ」 だったこと。
・西森の機嫌が良かったこと。
・岩代が医師免許を剥奪されるかもしれないと思い悩んでいたこと。

おそらく、西森は保険に加入しており、この偽装骨折で、保険金をせしめることを画策し、
その際、岩代に虚偽の診断書作成を依頼した。
そして事件当日、保険がおりたとの連絡があったのだろう。
そのため、西森の機嫌は良かったと考えられる。

岩代の不安は、この虚偽診断に起因するものだろう。
演奏室で西森の死体を発見した岩代は、西森が車椅子に乗っておらず、
このままでは、西森の両足が骨折していないことが容易に露見してしまうと考えた。
そのため、死体を車椅子に乗せ、西森の部屋に運び入れることで、西森の偽装骨折の露見を防ごうとした。
(西森の両足をこの時、本当に骨折させておくという手もある)
そんなところだと思う。


最後に拾っておく必要があるのは、演奏室のピアノへのいたずらの件だ。
これはおそらく、殺害の動機に関係する。

演奏室のピアノは、調律が故意に狂わされるいたずらが度々行われていた。
内部犯の可能性が高く、今後も同様のいたずらが予想され、調律には費用がかかることから、
ケチな西森にとっては、悩みの種であったろう。

そこで西森は、密かに演奏室に潜み、いたずらの現場を押さえようとした。
犯人は警備員の可能性もあり、防犯カメラに映る自室前の廊下を通って演奏室に移動することはできない。
そのため、西森は自室窓からいったん外に出た上、トイレの窓から侵入するルートを選択した。

演奏室に潜む西森。
そこへ、定時の見回りでやってきた警備員の青田が、ピアノにいたずらし始める。
その現場を押さえた西森だったが、反対に青田に殺害されてしまう。
青田はそのまま何事もなかったかのように (とんでもなく図太い神経の持ち主だが)、見回りを続けた。
岩代によって死体は西森の部屋に運搬されたため、その発見時には青田も驚くこととなる。


Q.E.D. 
[2010/08/15 23:51] GAME | TB(0) | CM(0)

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